東京高等裁判所 昭和42年(ネ)1738号 判決
被控訴人らの前記(一)のうち、(1)の行為を除く、その余の行為によつて、柳沢太郎は控訴人の業務の運営執行とくに経理に関して数々の不正不当な乱脈行為があつたかのような虚偽の事実を記載した印刷物を多数人に配布され、その名誉信用を著しく侵害されたのであるが、右はすべて柳沢太郎が控訴人の専務理事たる地位においてなしたものであるとするのであるから、同時に控訴人の業務の運営執行とくに経理に関して数々の不正不当な乱脈行為があつたことを意味するため、それによつて控訴人の名誉信用も同時に毀損されるにいたつたものといわねばならない。しかも右の事実に当審証人柳沢太郎の証言を合わせ考えると、被控訴人らが前記産経時鐘などを会員多数に配布したところ、控訴人の信用を失墜し、従来五、六〇名程度の脱会者があつたにとどまつたのに、右の配布された頃から脱会者が続出し一九八名の多きを数えるにいたり、経営が困離になつてきた事実(なお控訴人は昭和四四年七月ころ解散した)が認められ、右の点は被控訴人らの本件名誉毀損行為がその原因の一部をなしていると推認されることなどを考えあわせるときは、被控訴人らの控訴人に対する名誉信用の侵害の程度は著しく大なるものがあり、したがつて、控訴人が被控訴人らの前示行為を理由として、同人らを解雇する旨の決意をするにいたつたのは、まことに已むを得ないことであつたというべきである。
してみれば、控訴人が右の点を理由とし昭和四三年一〇月一一日付書面により被控訴人らに対してした即日解雇の意志表示は有効であつて、控訴人と被控訴人らとの間の雇用関係は、被控訴人沢野サト子、徳竹道子、牛山喜美枝の三名については右意思表示の到達した昭和四三年一〇月一二日限り、被控訴人野沢治枝については右意思表示の到達した同年同月一三日限り、それぞれ終了したものというべきである。
(多田 上野 岡垣)